第3の消毒薬なのか? 次亜塩素酸水論争まとめ

jiaensosansui matome

アルコールの代わりに手指の消毒ができるとして、次亜塩素酸水を紹介した。実際に歯科医などのクリニックで安全に利用されている例がある。

ところがこの次亜塩素酸水については、いまだ論争が尽きず混乱しているようなのだ。この論争、じつは長年にわたるもので、今に始まったことではないようだ。

ただ次亜塩素酸水は、弱酸性濃度でカビや細菌に絶大な効果があることだけは確かなようだ。

だから食品業界で広く使われている。しかし、漂白剤の次亜塩素酸ナトリウムと同等のノロウイルス消毒効果を発揮するには、かなりの高濃度でなければならないことがわかっている。つまり塩素濃度が低い次亜塩素酸水にノロウイルスの消毒効果はないのだ。

ノロウイルスの不活化条件に関する調査報告書(国立医薬品食品衛生研究所)

一方、NITE(独立行政法人製品評価技術基盤機構)は、次亜塩素酸水がインフルエンザウイルスに対して消毒効果があるとする試験結果を公開している。

インフルエンザウイルスを用いた代替消毒候補物資の有効性評価にかかる検証試験の結果について

しかし、この試験には異論を唱える人もいる。

肝心の厚労省の正式な評価は、今のところ(2020.6.4)ない。

次亜塩素酸水は市販できるものなのか?

次亜塩素酸水とは、塩酸又は塩化ナトリウム水溶液を電解することにより得られる、次亜塩素酸を主成分とする水溶液である、と食品衛生法施行規則(昭和23年厚生省令第23号)および食品、添加物等の規格基準(昭和34年厚生省告示第370号)で定められている。

有効塩素濃度は10~80ppmで、これは水道蛇口の50~100倍程度と低く、pH4~6程度の弱酸性である。

次亜塩素酸水は化学的に不安定なので、短時間で水に変化する。これが無害といわれる理由かもしれない。スーパーの入り口に消毒液として置かれていたり、無料で配布している自治体もあるようだが、刻一刻と塩素濃度は低くなり、ひと月もすればただの水になるという。

つまり次亜塩素酸水は、品質を保ったまま、商品として販売するのはかなり困難と言わざるを得ないものなのだ。

だから次亜塩素酸水とは別もののハイターを薄めた次亜塩素酸ナトリウム水溶液や、ただの水に変質した次亜塩素酸水が販売されるトラブルが絶えない。

高濃度次亜塩素酸水は安全か?

次亜塩素酸水は、塩素濃度500ppmといった高濃度のものが販売されている。高濃度なら、水になるまで多少時間が稼げるからだろうか。適当に薄めながら使うようだ。とはいえ、時間が経てばただの水になることに変わりはない。

しかし高濃度次亜塩素酸水の取り扱いは、次亜塩素酸ナトリウムであるハイターと同様の注意が必要であることは、ほとんど注意喚起されていない気がする。

飲むことはもちろん、皮膚に触れても危険である。次亜塩素酸水が安全といわれているのは、あくまでも有効塩素濃度が低いからである。でも、薄いからと言って無害であるとは言えない。細菌やカビを消毒できるんだから、無害なわけがないのだ。

次亜塩素酸水が手指の消毒に使えるかどうかについては意見が分かれている。敏感肌の方は、わざわざ使う必要がないと思う。とくにコロナについては有効性が定かでない。どちらかといえば期待薄である。

アルコールがなければ、無駄な抵抗はやめて、地道に石けんで手洗いしたほうがよさそうである。

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