テレビドラマは多過ぎる?
是枝監督がインタビューでこんな話をしていた。
(前略)最近のTVドラマについてはどう思われますか?
数が多すぎるなと思ってます。全部見られないんだもん。いまいくつあるんですか?
これだけの数をこなす役者もスタッフもいないよね。相当、無理して作ってるんだと思います。
昔はTVの前に座って見るものは一つって決まってたけど、いまは裏番組を録画して後追いで何本でも見れちゃうから。そういう意味では作り手が大変な時代になっている。これだけの数を埋めなくちゃいけない、誰の要請で埋めなくちゃいけないのかわかんないけど、単価は安い、数は多いで、役者も大変だと思いますよ。本当に変えた方がいいと思う。
集英社オンライン
筆者もここ数年、自分時間が増えてテレビドラマをよく見るようになった。確かに全部は見られない。見続けるかどうか試しに見てみるドラマだけでも相当な数である。多種多様なドラマが増えたのは悪いことではないように思っていたけれど、こんなところにも人手不足や低賃金の問題があることを知った。
スポンサーリンク
アマチュアとプロの垣根
人は創作して表現することを楽しむ生き物である。それが職業として成立するのはごく一部の層だけだったのだけど、この頃は以前よりずっと簡単にビジネス化できるようになった。
ずっと前から日本には、歌集や自伝を自費出版したり、映画やレコードを自主製作して発表する人たちがいた。だがそれは稼ぐことを目的とするビジネスとはちょっと違っていた。ひとりでもたくさんの人に作品を知ってほしいという願いや記念という意味合いが強いかもしれない。
有名になってプロになりたいという野心を抱く者がいなかったとは思わない。あわよくばという期待や夢を抱く人も少なからずいたと思う。数少ない発表の場のひとつだったのだと思う。
ところがインターネットでより簡単に誰もが発表できるようになった。アマチュアとプロの垣根が溶けてしまった感じがしている。
作品数が多いのは悪いことではない
作品の評価基準がお金やフォロー数になってしまうのも無理ないし、何をするにもお金が必要だから稼ぎたいという思いも真っ当である。
ただ過剰生産は低価格・品質低下を招くというのはあくまでもビジネス界隈の発想である。誰もが気軽に参加できるようになってすそ野が広がった結果、作品数が増えたことについてはむしろ歓迎したい。喜ばしいことではないかと思う。すそ野が広いからこそ全体の質が上がるのは周知のこと。
ヒトが作ったり表現することは止められない。その評価がビジネスや世間体、流行とか見栄といったものに引っ張られるのもまた人情。
それでもなるだけ引きずり込まれないように踏ん張って、自分なりの鑑賞の目を養っていきたい。
合わせて読みたい関連記事
スポンサーリンク