50代になってはじめて、本気で痩せなくてはならないことになった。
やせっぽっちのおちびで体力がないというのが長年の悩みだったわたしがここにきて急に太ったのだ。ろくに運動もしないで甘いものを以前よりたくさん食べるようになっていたのだから、あたりまえといえばあたりまえである。
それでも、かつてダイエットとは無縁だったこのわたしが、痩せねばならないほど太ってしまったなんて信じられなかった。中年太りなど誰にでもあることだ。大したことない。そう言い聞かせて知らんふりしていたのだが、脳動脈乖離を発症し、高血圧の投薬治療を始め、医者に減量とまでは言わないまでも、遠慮がちに太らないよう注意されたときには、さすがに目が覚める思いだった。
わたしのように昔は痩せていたという人は、肥満に対する耐性がない。とくに更年期前後の急激な体重増加はヤバいという。体重計を避けるようになって、二重顎が気になるから鏡も見なくなる。あるある話が嘘のように当てはまっていた。
どうやって痩せればいいのか。わたしは途方に暮れた。
ダイエットにお金はかけない
ダイエットにお金はかけない。かけられないのだ。
だから便利なダイエット食品でラクラクダイエットなんてこともできないし、優秀なパーソナルトレーナーについてもらって、効果的なトレーニングをすることもできない。
だいたい減量するのにお金をかけるなんて馬鹿らしい。無駄な食費を使い、楽して運動を怠ったのが原因だからだ。つまり、支出を減らして動けば痩せるということだ。あるかないかわからないお金でどうにか暮らしていかねばならない隠居生活もそう遠くない未来に訪れる。ならば少しでも、お金を使わない暮らしに慣れておくのも悪くない。
と考えるのは簡単だが実践は困難だった。
以前から続けていたゆるHIITとストレッチだけでは痩せない。第一このわたしの運動にはほとんどお金はかかっていない。高価な便利家電や家政婦さんにお金を使って楽しているわけでもない。
やはり食事が問題だ。
一長一短ロカボの魅力
とはいえ食事には一番手をつけたくなかった。あまり調理が得意でないわたし、いくら健康にいいとわかっていても、手間がかかることは続いたためしがない。当然お金がかかることも続かない。
ということは、減らすほかに道がない。
ついつい食べ過ぎる甘いものを買わないようにしようと思ったこともあったが、家族がほしがるので断念。
それでもつらい思いをしておやつをできる限り我慢してみたものの、ほとんど痩せない。ダイエットというのはつくづく難しい。半ばあきらめかけていたときに出会ったのがロカボだった。
ロカボというのは糖質制限の緩い方法である。ただ糖質制限は、人によってはかえって害があるという説にわたしも同意している。糖質を減らした分を脂質やたんぱく質をとって満足感を得るのが吉と出る人もいる一方、腸内細菌のバランスを悪くして、かえって健康を害する場合もないとはいえない。中には、糖質制限を長期間したために、インスリン分泌機能が働かなくなってしまうといった深刻な場合もあるという。つまり安易で極端な糖質制限にはリスクがあることを知っておきたい。
ただ、このロカボというのは、基準内の糖質はとってもよいというルールである。また、その基準には幅がある。慣れれば自分なりの基準を決めることもできそうだ。食後の血糖値が上がり過ぎないようにするため、基準は一食ごとに設定する。たとえば朝食の糖質量が少なかったからといって、夕食でその分を加えて食べるということはできない。
また、ロカボは一日に間食として10gの糖質をとってもいいことになっていて、ちょっとだけ甘いものが心置きなく食べられるのだ。
もし、ロカボのルールがなければ、きっとわたしはこれっぽっちのおやつではとうてい我慢できなくなっていただろう。ところが、ロカボのルールがまるでゲームのようにおもしろくて、ふしぎなほどあっけなく、おやつの量を減らすことに成功してしまったのである。
食事についても糖質量を計算する癖がついた。甘い調味料や甘い野菜にもくわしくなった。しかし、何といっても糖質の王様は米や小麦といった主食である。ごはんにパン、麺類といったおいしいものは、ほとんど糖質でできていることをあらためて思い知り、愕然とした。
わたしは何でもごはんといっしょに食べるのが好きだった。どんぶりや卵ご飯、とりあえずごはんを食べていればいいと思ってきた。寒い日に食べるラーメンやうどんも大好きだ。主食とはよく言ったもので、これこそ食事の中心であったのだ。
だからわたしの場合、主食を減らす以外に糖質を抑えるものがない。調味料やイモ類といったおかずの糖質量など、たかが知れている。ロカボをすると決めて以来、わたしは主食を半分にするよりほかに方法がなかったのだ。
ところが、それが案外苦痛なく続けられているのだからわからないものである。これが数字の力なのか。糖質量を抑えているという満足感がわたしの支えになっている。
ロカボで3kgダイエット
ロカボを始めて間もなく、横ばいが続いていた体重が落ちてきてびっくりした。そうするとますますおもしろくなってロカボに励む。それでようやく3kg痩せることができた。
わたしの体重は糖質の重さだったのか。
栄養のバランスは重要だ。何でも減らせばいいというわけではない。とはいえ砂糖をはじめ、食物繊維を除いた糖質は、おいしいのでついとり過ぎる。やめられなくなる。そんな困った性質があることだけは確かだ。
適正なロカボを続けていると、痩せ過ぎの人は太り、太り過ぎの人は痩せて、ちょうどいい体重になるという。ちょうどいい体重というのも、きっと人によって違っていて、身長や年齢、性別だけで決められるものではなさそうだ。
わたしはおそらく、もうしばらく痩せないといけない。
ロカボは主食とおやつを減らすので、家計のダイエットにも貢献している。その点もわたしのモチベーションになっているのかもしれない。
一長一短ロカボもやりようである。
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