中短編アンソロジー読書

日本の戦中戦後の小説

日本文学100年の名作3巻と4巻は1934(昭和9)年から1953(昭和28)年の二十年間の作品集。太平洋戦争前後という大波乱の時代である。いったいどんな思いでどんな暮らしをしていたのか。その一端を知ることができる。

徴兵や男女の関係は、今とずいぶん違うところがあるけれど、将来が見えない不安とか、工場で働き詰めの労働者とか、薬物中毒になる絶望的な若者の姿など、今も通じるものの多さには何とも言えない気分になる。

時代が変わるとはどういうことなんだろう。便利なテクノロジーが発明されて、暮らしが快適に進化していくことか。そうすれば人や環境もいいように変わっていけるという予想は残念ながら今のところ外れている。「衣食足りて礼節を知る」ということわざは、少なくとも人間界には通用するものと信じたいけれど、自信が持てなくなってきた。

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過酷な時代にも小説が書き続けられてきた

小説にはそのときどきの時代背景があらわれる。たとえ時代劇やSFであっても、書かれた時代特有の解釈や流行があったりする。だから日本文学100年の名作を読んでいると、同時に歴史を学んでいるような気になる。そこに大地震や戦争の傷跡が染みついていたりするからだ。その一方、昔の話として片づけられないような現代と重なる風景に震える。

想像を絶する過酷な時代の中でも、このような作品が書き続けられてきたことを誇らしく思わずにいられない。

読み継いでいくことが未来を拓くかも

戦争はなくならないし、快適な暮らしは地球環境を破壊し続けている絶望的な今、日本文学100年の名作を読んでいると、人間は、結局同じことを繰り返すことしかできなくて、このまま変われないのではないかとゾッとしたりもする。

とはいえ、いくら人間が変われなくても、周囲の環境は嫌でも変化している。翻弄されつつどうにかしていくしかない。そうすればそのうち、もしかしたらいいアイデアが浮かぶかもしれない。そんなことを期待しながら読書している。

日本文学100年の名作は、掲載されている作品のほかにもたくさんある。売れ筋の新作ともども、こうした名作の数々を埋もれさせないで読み継いでいけるようにしていけるといいなあと思う。

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