コロナ危機でおうちにこもらないといけなくなって、ちょっと本でも読んでみようかと思っている方の参考に。まったく個人的な趣味で本を紹介してみたいと思う。
コロナ危機には大きな二つの不安要素があって、ひとつはあたりまえですが健康です。でも、感染症は個人の健康の問題にとどまらない大きな社会不安を引き起こしてしまうところが実にコワイ。
うちはコロナ危機に関係なく、収入がどんどん減っていたので、老後どころか毎日の生活をどうやりくりしていこうかと思い悩みながらこの本を読んだ。
あたりまえだと思ってあきらめている経済の仕組みについて、ちょっと引いた視点で学ぶのに最適かと。
これで家計や資金繰りが良くなるわけではないけれど、うっかりだまされずにしたたかに生きる元気が出てくるかもしれない。具体的なHOW TO本もいいですが、たまには視界を広げてみるのもよいものです。
コロナ危機の今こそ読みたい資本社会の限界がわかる『父が娘に語る経済の話。』
経済の本とは縁遠い、ふつうの主婦でも読みやすい。読み物として楽しめます。
著者は2015年、ギリシャの経済危機時に財務大臣を務め、EUから財政緊縮策を迫られる中、大幅な債務帳消しを主張し、世界的なひんしゅくを買った経験の持ち主。長年イギリス、オーストラリア、アメリカで経済学を教え、現在アテネ大学経済学教授である。
経歴を知り、借金帳消しを主張するとは厚かましい! などと思いながらも興味を持った。経済学の先生が、なぜに借金帳消しを主張したのか? どういう理屈があるのか? 知りたいと思いませんか?
机上の論理を語るだけの実務能力に欠けた専門家なのかと思いきや、とんでもない。深いかどうか素人にはさっぱりわからん専門家にありがちな視野の狭さがない。それどころか現場で思い悩み、思考を重ねてきた豊富な知識が垣間見られる非常に文学的で魅力的な文章なのだ。その面白さと説得力で一気に読めてしまった。おそらく経済の本を読んだのはこれがはじめてだ。
『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』の著者ブレイディみかこ氏は
経済をこれほど詩的に語れる書き手がいまほかにいるだろうか。
と絶賛していたのがよくわかった。
借金のイメージが変わる!
この本を読んで借金のイメージが変わった。
借金はなるだけしないほうがいいし、借りたものは返さないといけない。借金が返せなくなるのは、借りた人のミスである。
そう思ってきたけれど、資本社会は借金することでお金を増やす。借金が返せなくなるのも、必ずしも借りた人のミスとは言えないようなことが起こる。そういうことがわかってくると、これまでの借金のイメージががらりと変わってしまった。
日本も現在借金大国である。このコロナ危機でさえ、政府は財政健全化を理由にお金を使おうとしない。確かに、これ以上負債を抱えると、この国は破産するんじゃないか、と心配になっている人も多いと思う。
しかし、国の借金は増えても破産しないという専門家もいる。
経済評論家とか専門家たちは、ひとりひとり意見が異なる。
非常時にはお金をばらまくべきという人もいれば、そんなことをしても効果がないという人もいる。消費税についても意見はばらばらだ。
何でも専門家に任せればいいというけれど、肝心の専門家でもわからないことのほうが多いのが現実なのだ。そんな専門家の話を聞いて実践するのが政治家で、その政治家を選んでいるのがわたしたちなんだからわけがわからない。
何にも知らずに大事なことを任せてはいけない、と著者はいう。
うちにこもってこの国を案じるばかりの今、わたしたちが生きている資本社会の仕組みを学んでみてはいかがだろう。
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