わたしは行き詰まって落ち込んだとき、なぜか読書がはかどる。現実逃避にいいのかもしれない。何かしら充実しているようなときは、読書する時間がないように思う。
コロナ危機の昨今、カミュの『ペスト』が売れてるらしい。825円の文庫本が倍近い価格で売られていてびっくり。楽天ブックスでは入荷待ちである。こんなとき、電子ブックがうらやましい。
カミュの『異邦人』は読んだことがあった。確かカフカの『変身』を読んだあと。どっちもそれなりにおもしろかったように思うのだが、殺人と虫の話としか覚えていないのだから情けない。
『ペスト』は読んだことがない。
今まさにパンデミックの真っ只中にあってこれを読むのは、何だか生々しくてコワイけれど、どんな結末を迎えるのか、知りたい気もする。
そんなとき、NHKの「100分de名著」という番組の「ペスト」の回が再放送された。すっかり読んだ気になってしまいそうになるが、人物紹介や名場面の朗読を聞いていると、あらためてきちんと読んでみたい気にもさせられる。なかなかいい番組である。
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カミュはペストを人生のあらゆる悪の象徴として描いているといわれている。死、病、苦痛をはじめ、人間内部の弱さや残酷さ、あるいは貧苦、戦争、全体主義といったものまで想像させる作品だ。
確かにパンデミックは、個人的な健康のこと、日々の生活のこと、ふだんは意識しない自分の内面や政治のこと、いろんな側面と向き合わざるを得なくなる。
いろんな事情のいろんな立場の人、考えもできることもそれぞれ違う人と社会の中でいっしょに生きていることを思い知らされる。そんなひとりひとりが協力して行動を自粛することの困難さに目がくらむ。
坂本龍一氏は、中国・武漢の人などに向けて個人でライブ配信をしたことについて次のように語っている。
「少しは気持ちを休めてもらうというか、砂漠の中の一滴になるかもしれない」との思いだったという。一方で「僕は『みんなで頑張ろう』みたいなのは生理的に嫌い」とも強調する。
「『みんなで頑張ろう』みたいなのは生理的に嫌い」というくだりには、わたしも苦手だから共感して笑ってしまったけれど、できることをただ粛々としている姿が印象に残った。
不公平や不平等を旗印にした同調圧力には気をつけたい。
ひとりひとりできることは違う。
わたしにできることはなるべく家にいて、体調に気をつけることくらいだ。
その一方、できることなら家にいたいと思いながら、なお働いてくれている人がいる。そのおかげでわたしは不自由することなく家にいられるのだ。家でおとなしくしていることは、感染する危険と向き合いながら働いてくれている人の負担を軽くすることでもある。そのことを心に留めて過ごしたい。
それにしても、接触を減らすことがこれほど難しいこととは。
コロナ様、このあたりで勘弁してくれませぬか……。
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