コワい子どもが出てくる小説

あらすじ書いてますのでご注意。

子どもを描いた小説に

子どもを描いた小説には、大人にとって背筋が寒くなるよなゾッとするのがある。最近読んで印象に残ったものが二つ。

一つは谷崎潤一郎の『小さな王国』。もう一つは桐野夏生の『アンボス・ムンドス』。いずれも新潮文庫の日本文学100年の名作の第1巻と第10巻に収められている短篇である。

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谷崎潤一郎『小さな王国』

谷崎潤一郎といえば『春琴抄』『細雪』といった美しい女性が登場する映画を思い出す。小説を読むのはこれが初めて。

小学校の先生が謎の転入生が作り上げていく子どもたちの王国に取り込まれていくお話。子どもの話として書かれているが、解説には独裁者が権力を握っていく様を描いているという。

先生が子どもの王国に取り込まれざるを得ない背景には深刻な貧困がある。

子どもがコワいというより人間社会の闇を感じるお話。

桐野夏生の『アンボス・ムンドス』

担任の若い女性教師と既婚で女子生徒に人気のあった教頭先生が夏休みに不倫旅行に出かけている間に、女子生徒が山で転落死する事件が発生する。

死亡した生徒はクラスの嫌われ者だが厄介者で恐れられてもいた。その日はなぜか天敵と思われる仲の悪いクラスメートらと一緒に川遊びに出かけていた。先生の不祥事ばかりが問題になり、生徒の死亡事件の真相はわからないまま、不注意による転落事故として処理される。

同行していた女子生徒たちは事件でショックを受けたようすはなく、笑っていたという噂まであった。女性教師は現場にいた生徒たちから真相を聞き出そうとするが、教頭が自殺したことをきっかけに辞職する。のちに女子生徒たちは、担任と教頭の不倫関係はもちろん、旅行の日程も知っていた可能性があり、教頭は自宅ではなく生徒が転落死した現場で自殺していたことを知る。

これは嫉妬や妬みから生じた悪意がとんでもない行動につながってしまったお話。女子生徒に何があったのかは結局わからないものの、限りなく殺人の疑いが濃い。先生二人はうまい具合に利用された格好。これが小学五年生の女子生徒たちのたくらみだとすれば空恐ろしいけれど、子どもだからこそ実行できたと思わなくもない。

あの子たちが、当時の私と同じ二十六歳になったら、このことをどう思うか、ですか。私はそっちの方が知りたいような気がします。

でもきっと、そのあと先生が述べているように、生徒たちは忘れてると思う。そうでないとしんどくなる。

人間って都合の悪いことは忘れるようにできている。そう思うとコワい。

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