堅実な家計管理の常識の一つに先取り貯金があります。まず先に貯金額を引いてしまうやり方ですね。
これ、ある程度余裕がないとできません。
月収に凹凸がある場合や臨時支出があったとき、天引きされた貯金額以上の赤字が出て、「なんのこっちゃ」みたいなことがよくあります。
たまの赤字ならいいんですが、常時赤字が続く状態になって、わたしはパニックになりました。
収入の減少で思うように貯金できない状態に、わたしはあせりまくりました。
「何が何でも貯金せねば」という常識は状況によっては非常識。
どう考えても赤字なのに、先取り貯金をしている状況こそ異常です。
毎月貯金していることが心の支えになるのは、少なくとも借金していない場合です。
赤字ということは、不足分をどこかから融通しているということで、それはつまり、貯金をまったくしていないのと同じこと。
余計な支払利息が発生している可能性すらあります。そんなこともわからなくしてしまうのが「先取り貯金」信仰でした。
「先取り貯金している」という安心感はクセモノです。
非常時は「貯める」より「守り」
非常時というのは赤字が継続しているときを言います。
そんなときは、新たに貯めることは即刻中止し、今ある資産を減らさないことに力を注ぐべきです。
ところで、今どれぐらい資産があるか把握してますか? 以前のわたしは把握しているつもりで把握してませんでした。
今すぐ通帳やネットで残高を調べましょう。
将来はいつだって不安。今、貯金できなくてもほかにできることがある。
お金の不安は貯金をしていても尽きません。
いざというとき、貯金が多少あったところでどうせ足りないんです。
何かあったとき大事なのは、貯金よりも立て直す余力です。
「立て直すのに貯金がいるんじゃないか」と、わたしもずっと思ってきました。
確かにお金はないよりあったほうがいいことは否定しません。
でも、そんなとき、借金があったらどうでしょうか。
また、固定費や生活費が大きいままだと、いくらかの貯金があっても、それは立て直す力にはなり得ません。
お金は回せれば破産しない。
お金は、とにかくぐるぐる回せれば破産することはないんです。これは誰だったか経済の専門家が言ってたことです。目からウロコでした。
その話を聞いて、貯金するだけが家計を守る手段ではないんだ、ということに気づいたんです。
わたしは貯金が少なくて不安でしたし、貯金ができなくてあせってました。また、支出がかさんで苦しくてしかたありませんでした。
そこで、無理な先取り貯金や赤字家計を見直すことにしたんです。
身の丈に合った生活にリサイズし、今あるお金だけで回していけるように努めました。もちろん赤字を招く先取り貯金は止めました。
不思議なことに、こうして家計の見直しに取りかかっただけで、気持ちが少しラクになったんです。
家計の漠然とした不安は恐怖に近いものでした。それがしっかり向き合ったことで薄らいだんですね。
バブル世代のわたしが生活を縮小するのには何年もかかってしまいましたが、それでも徐々にできるようになるものです。時とともに年を取り、考えや暮らし、環境も変わりました。
暮らしを小さくするのは、やみくもに節約するのとは気分的に違います。おしゃれなミニマリストたちの台頭で、「小さな暮らし」は、以前よりずっとやりやすい時代になっていると思います。
貯金ができないことや、老後資金の不安がすっかりなくなったわけではありません。でもきっと、今はこんなふうに、あるものをぐるぐる回しながら、どうにか暮らしを守っていくときなんだと思うことにしています。
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