映画の宣伝を見て
映画の宣伝を見て興味を引かれた。どんな話なのかまったく想像できなかったからだ。人気本だったので、予約してからずいぶん待った。いつ順番が回って来るかわからないので、せっかく順番が来ても、結局読まずじまいになることもあるのだけれど、今回は一気に読んだ。
さすが映像になるだけのことはある。とても現代的で面白かった。十年後に読んだら、どんな感じがするだろうか。
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性欲ではなくて正欲
タイトルがわざわざ正しい欲となっているのが示唆的。性に限らず、世の中には正しいのはこっち、と決めてかかっているものがある。多様性をうたいながら。そんな矛盾が描かれている。
中に三大欲というのが出てきて、睡眠欲、食欲、性欲という三つをあげているのだけれど、これがどうも腑に落ちない。調べてみたらマズローという心理学者の分類によるものと説明されているものもあるが、諸説あっていずれも根拠がない都市伝説的なもののようだ。
単純に考えても睡眠や食事はしないと死んでしまうけれど、性欲はなくても死にはしない。並べて考えるのに少々無理を感じた。
性の分類
人間の脳は、分類して整理して考えるようにできていると聞いたことがある。だからきっと分類するのが好きなのだなあとあらためて思った。
そういえば、何年か前、NHKの夜ドラ「恋せぬふたり」でアロマンティック・アセクシュアルという恋愛しない人たちの存在を知った。先日、性交渉しない結婚を望む人たちのためのお見合い相談所が紹介されていた。朝ドラ「虎に翼」の主人公も社会的地位を得るために結婚したが、これとはまた違った感じか。何だかどんどん細分化している気がする。
以前、産婦人科の医師が性を分けるはっきりしたものはなく、便宜上線を引いているというような話をしていた。かたちやものの有無で決まるものではないらしい。言われてみれば性別がなかったり、途中で性別が変化する生物がいるくらいだから、性を区別するものはあるようでないのかもしれない。
細かく分類していくと、誰もが少数派になる。より多くの種類の人が含まれる寛容な社会であればいいけれど、正しさもまた細分化していくと、生きづらさが増すばかりである。
『選択の科学』には興味深い実験のことが書かれている。ジャム専門店のジャムの種類は多ければ多いほど売れるわけではなかったのだ。人は選択肢が増え過ぎると選べなくなるという。
細かく分類し、当てはまるかどうか吟味するのは、ほどほどにしておいたほうがよさそうだ。
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