阿部サダヲがコワ過ぎて。
NHKの土曜ドラマ「空白を満たしなさい」の阿部サダヲが演じる佐伯という男のセリフがいつまでも心に重く残っていて憂鬱になる。
旦那さんはね、幸せの奴隷だったんですよ。
本当はわらってしまうくらい疲れてるのに、充実していると言い換えなきゃならないんです。
幸せとは、結婚して子供作って家を買って家族で暮らすことだ、などとはさすがに思わなくても、こういう暮らしが幸せなんじゃないか、といった漠然とした価値観を世の中に押しつけられているような、そんな気がして息苦しくなることってないだろうか。
生きるってたいへん
宮部みゆきの『火車』に出てくる悲劇のヒロインは、ただ平穏に生きたくて、自分の戸籍を捨て、他人に成り代わろうと犯罪に手を染める。
自分だったらそこまでできるだろうか。ほかにもっといい方法はなかったのか。そんな悠長なことは、同じ立場に置かれたらぶっ飛んでしまうかもしれない。恐ろしい境遇からただ逃げ出すだけではこの地獄は終わらないと思い知ったのだ。他人に成り代わってでも安心した暮らしを得ようともがく姿には慄然とする。
生きるためには何でもするという人がいる。でも、できることはひとりひとり違う。似たような立場になっても、とてもほかの人と同じようにはできないな、と思うことがわたしにはたくさんある。そんなとき、「自分は駄目だなぁ」とか、「頑張りが足りないな」と思ってがっかりする。
「幸せになりたかっただけなのに」なんてよく言うけれど、ヤマザキマリさんは人生相談で、「生きるってたいへんなこと」だときっぱり言ってたのが爽快で印象に残っている。
幸福の形はいつも同じ?
幸福な家庭はどれも似たものだが、不幸な家庭はいずれもそれぞれに不幸なものである。
トルストイ『アンナ・カレーニナ』
やっぱりかなり昔から幸福の共有イメージが刷り込まれてる気がする。
豊かで平穏な暮らしって感じでしょうか。
でも、生きるってたいへんなことなんだと思っていた方がよさそう。そんな中、幸福は一瞬のきらめきみたいなもので、流れ星みたいに見逃しがちなのかもしれない。
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