国際貧困支援NGO「オックスファム」によると「世界のトップ62人の大富豪が、全人類の下位半分、すなわち36億人と同額の資産を持っている」という。
格差問題では、ごく一部の大金持ちが地球上の大半の富を独占しているといった話をよく聞くようになったが、正直ピンとこない。
同じ仕事をしている正社員と非正規で賃金に大きな格差があると言われたら「それはおかしい」と思うけれど、突き抜けた大金持ちのことは案外知らないものである。
突き抜けた大富豪はそれなりの危機感を持っているらしい
ひと言で大金持ちと言っても、代々の金持ちからひとりで成り上がった人までいろいろである。それなりの苦労や努力をしたんだろうと思いたいが、お金持ちになったのは、努力や才能ではなく、たまたまというのがほんとのところだと思う。
ところで、お金持ちも突き抜けてしまうと、景気動向やたいていの災害なんかではびくともしない。むしろますます勝手に資産が増えるもののようだ。そうなると不思議なもので、こんなことでいいのか? と思うようだ。
資産家の資産は、結局は正当に分配されずに搾取されたものに過ぎない。貧困がまん延すれば、やがて経済が回らなくなる。そうなるとさすがの大富豪もなすすべがない。それはちょっとヤバいんでないか? ということになるらしい。罪悪感みたいなのもあるんだろうか。
『武器としての「資本論」』に、アメリカの有名な投資家で大富豪ウォーレン・バフェットが『ニューヨーク・タイムス』の寄稿で
私の秘書が負担している税率が、私自身が負担している税率を上回っている
と明らかにしたことが書かれている。
一般労働者の税率のほうが大富豪の税率より高いことが話題になり、その後、富裕層の増税案が議会に提出されるがあっさり否定されたとある。
今の世の中は、お金持ちほど重税になる累進課税はどんどんなくなりつつあるのだ。
バフェットの記事は、突き抜けた大金持ちの危機感のあらわれだという。
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金持ちの言うことなど聞く耳持たぬ?
先日、朝日新聞に「富豪が憂える資本主義」というインタビュー記事が掲載された。超富裕層の勝ち組になった起業家でベンチャーキャピタリストのニック・ハノーアーさんがたいへん興味深い意見を述べていた。
彼は6年前の講演で「自分たちのような富豪は熊手を持った民衆に襲われる日が来るだろう」と予言している。
極端な格差は社会を壊し、いずれは富裕層の暮らしすら維持できなくなる
という。その一方で
数百億円以上の資産をいったん築いてしまえば、株価が急落しようが、不動産バブルがはじけようが、心配ない。最も裕福な人たちは今も富を増やしています。」
などと少々嫌味である。
しかし、彼は経済を支えるのは99%の普通の人であると述べている。そして、
大企業に累進課税ならぬ『累進規制』を課すべきだと提案する。大企業ほど高い最低賃金や厳しい労働規制を課すというもの。そうすれば地方都市が恩恵を受け、中小企業が有利になり、寡占を防げるというのである。『累進規制』とはなかなかのアイデアだ。
資本主義の良さを発揮するには、格差を是正するための大企業や富裕層への規制が欠かせないと述べる。
しかし現実はまったく逆の方向に動いている。
この大富豪の危機感に、本気で耳を傾ける者がいったいどれくらいいるのか心もとない。実際、オットは彼の裕福ぶりに嫌気がさして、「累進規制」の話の前で読むのをやめてしまった。
考えてみれば大富豪は圧倒的な少数派だ。格差に危機感を持つ富豪はさらに少なそうである。お金持ちになる方法以外、富豪に興味を持つ者はいないのかもしれない。いっそお金をばらまいて、格差是正の提案を聞いてもらおう、という富豪はさすがにあらわれない。格差是正キャンペーンに、お金持ちの嫌味を大いに発揮すればおもしろいのに。
世の中を憂うのに金持ちも貧乏人もない。でも極端な貧困は、憂う余裕さえ奪われる。革命を起こすには、中産階級の充実が必要であるという人がいた。ごく一部の大金持ちとその他大勢の貧困層からなる世界は、そのまま破滅に向かうしかないらしい。
嫌味な大富豪の意見にも、耳を傾けるだけの余裕は持っていたいと思う。
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