燐家が突然空き家になった。
暮らしていたご夫婦が相次いで亡くなったからだ。
高齢者とはいえ、まだまだお元気そうだったし、亡くなるにはまだ若い年齢だったので動揺している。
最近見かけないなあと思っていた
ひきこもっているわたしでも、お隣の奥さんと顔を合わせない日はめずらしかった。
きれい好きでおうちのまわりをいつも掃除していたし、陽気で話しやすい人柄だったので、誰かと話をしている姿をしょっちゅう見かけていたからだ。近所に住む孫の送り迎えも日課のようだった。
うちも引っ越してきたとき、何かと親切にお世話していただいた。家族全員引っ込み思案なので、とても頼りにしていて心強い存在だったのだ。
「最近見かけないなあ」と言いながら、旅行だろうか、ひょっとして入院かしらなどと話し出した頃、子ども夫婦らしい二人が通ってきて、庭掃除を皮切りに、数日かけて家財道具を運び出し、大掃除ならぬ片づけを始めたので驚いた。
ただ事ではないと思いながら声をかけることもできず、それでも亡くなったとは思いもしなかったので、引っ越しかしらとただただ見守るばかりだった。
そうこうしているうちに、亡くなったと知らされた。
びっくりするとともに、何とも言えない心細さを感じた。
一人になったご主人は
残されたご主人は、奥さんと違い、ふだんからあまり見かけなかったのだが、突然のお別れでさぞ寂しかろうと案じていた。
片づけが一段落した頃、夜には明かりが見られたお隣から、すっかり人の気配がしなくなっていた。ご主人が入院したという。病気がちだったという話も聞いていたので、お疲れが出たんだろうと思っていたら、まもなく亡くなったという知らせを受けた。
こんなことがほんとに起こるんだ。
ついこの間まで、お隣で生活していた人が急にいなくなって、おうちだけが残された。じわじわした寂しさがおさまらない。
おうちがそのままそこにあるからだろうか。外に出ると、見ないわけにいかない。見ると、思い出さずにはいられない。もう会えないなんてとても信じられない。
覚悟して別れた父とはまた違ったダメージを感じている。
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