読書選びはおもむくままに

dokusyoerabi omomukumama

なんだかんだいって読書が一番お手軽で楽しめる趣味なのだが、読める本には限りがある。

この年になって年々視力も気力も落ちていくのを実感するようになってくると、残り時間を意識して、あと何冊くらい読めるかなぁと思う。ミステリーの名作を中心に読もうと決めたところだったのに、最近どうしても読みたくなって【「人新生」の資本論】というのを読んだ。

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公平な読書選びは無理

やっぱり世の中にいろいろ気になることがあると、他の人の考えが知りたくなって本を読む。そこで選ぶ本にはどうしても偏りが出てしまうのは致し方がない。

そもそも興味そのものに偏りがあるうえ、嫌悪感のある本は自然と避けてしまう。限られた時間でわざわざ気分を害する本は読みたくない。

とはいえ最近SNSなんかで問題になっているように、自分好みのものばかり読んでいると、思考がますます偏って、無知になる不安がないではない。共感できない思考にも、そう考えるそれなりの理由があるものだ。あえて好みでない本や記事にも目を通さねば、などと思い直してみることもある。

でも楽しみの読書に、無理をしてまで公平である必要などあろうか。いやいや未知の世界を知るチャンスかもしれない。はじめはまったく興味がなかったのに、といった偶然の出会いの中にほど、思いがけない魅力的なものが隠れていそうな気がしないでもない。などと思い出したらきりがない。我ながら欲深い。

考えが偏ろうが、知らないことが増えようが、できる読書には限りがある。読書は、その時の気分のおもむくままに楽しんでいる。

【「人新生」の資本論】つながりで読んだ本

これからの時代、共有が大事になってくるというので、【共有地をつくる】という本を読もうと思ったのだけど、新しいせいか行きつけの図書館にはまだなかった。それで同じ著者の【小商いのすすめ「経済成長」から「縮小均衡」の時代へ】を読んだ。

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これはまえがきにもあるとおり、小商いのハウツー本ではない。ちょうど東日本大震災直後に書かれたものだが、現在の日本の姿がすでに見えていたような内容に驚かされる。こんなふうに問題の兆しをずいぶん以前から察知している人たちがいるというのに、結局どうすることもできないまま、行くところまで行ってしまうのが社会問題なのかと暗い気持ちになる。

この本で印象に残っているのは

人間というものは意思していることと違うことを実現してしまう動物であり、今起きていることは、わたしたちが意思し、望んできたことの結果として起きていることではないのかと考えるべきだ

というところ。そして

身の回りの人間的なちいさな問題を、自らの責任において引き受けることだけが、この苦境を乗り越える第一歩になる

とある。

これがどういうことなのか、考えている。

読書ひとつとってみても

おもむくままに偏った読書をしていても、趣味の合わない思考や共感できない登場人物、癇に障る文体など、好ましくないと思うものに出あうことも少なくない。それをおもしろがれるときもあれば、どうしても受け入れられずに中断することもある。

読書ひとつとってみても、多様性を受け入れるのってむずかしい。

世の中には、ほんとにいろんな価値観を持つ人が思いもよらない暮らしをしている。もめないわけがないし、みんな仲良しなんて不可能だ。どうすれば互いのリスクを減らせるのか。たえず落としどころ探り合うのが人生なのかもしれない。

ひとりひとりにできるのは、身の回りの人との関係を一つ一つ積み上げていくことだけということか。

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