『父が娘に語る経済の話』はほんとに美しく、深く、とんでもなくわかりやすかった

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政治・経済はよくわからないし興味がない。

わかったところで暮らしに役立つとは思えない。

長いことそんなふうに思ってきたけれど、あまりに無知だと新聞やニュースを見てもおもしろくない。

だいたい世の中どういう仕組みになってるかぐらいわかっていたほうがだまされにくい。

そう思うようになって、勉強マニアな佐藤優氏の本を読んだことがきっかけになって、この頃すっかり読書づいている。

この本は朝日新聞の広告で知り、佐藤優氏絶賛!とあったので早速読んでみた。

ここ最近の読書でいちばんおもしろく、世の中を見る目が変わった一冊になりました。

経済は専門家にまかせちゃいけない。

著者は経済学者でいわゆる専門家。しかもあの破綻したギリシャの経済危機時の財務大臣。大幅な債務帳消しを主張した人なんだとか。

前々から専門家は胡散臭いと思っていたわたし。

わかりにくくて役に立たないか、どうでもいいことを自信満々に言いたがるし、素人が知らない専門用語を使いがち。

もしかしてわかってないんじゃないの? という疑念を抱かせることもある。

根拠のない予測をし、間違っても大きな顔してるところも腑に落ちない。

著者はわたしのそんなもやもや感を吹き飛ばしてくれた。

経済理論や数学を学べば学ぶほど、一流大学の専門家やテレビの経済評論家や銀行家や財務官僚がまったく見当はずれだってことがわかってきた。

一流の学者は見事な経済モデルをつくっていたが、そうしたモデルはその本に書いたような現実の労働者やおカネや借金を勘定に入れていない。だから市場社会では役に立たない。

二流の経済評論家たちは、自分が崇める一流の経済学者のモデルを理解していないばかりか、自分の無知を気にとめてもいないようだった。

経済については、都合の悪いおとなの事情があったり、無知だったりして、子どもたちに本質的なことをごまかさないでちゃんと説明できるおとなは少ない、というかほとんどいないと思っていた。

ところがこの本は違う。現状を批判するでもなく、きれいごとにするでもなく、淡々とありのまま説明されていることにびっくりすると同時に、そのわかりやすさに感激する。

文中に出てくる映画をあらためて見たくなるおもしろい内容。

格差や貧困がなくならない仕組み

一部の支配者が都合のいいように利益を得つつ、しかも庶民に反乱を起こさせない。そのために作られたのが今の経済の仕組みというのだから、庶民的には絶望的。

一方の支配者もまた、利益を奪い合う激しい競争にさらされ続け、倒産リスクを負い、ますます支配は集中していく傾向にある。

厳しい競争を強いられた支配者のコスト削減が進んだ結果、消費者である庶民の多くが貧困になり、モノが売れなくなって支配者の利益が上がらなくなる。

すると今度は庶民が死なない程度のなるべく安いコストで雇用するところで落ち着く。

こんなことを繰り返しているのだから、格差も貧困もなくならないわけです。

何となく今の経済は、自由競争で公正な素晴らしい仕組みだと思わされているけれど、じつは格差や貧困を生むとんでもなく不完全な仕組みで、残念なことに、それをうまく調整するすべもないのが現実なんですね。

庶民にできること

著者は、正反対のふたつの主張が衝突する時代にわたしたちは生きていると述べています。

一方は「すべてを民主化しろ」で、もう一方が「すべてを商品化しろ」です。

権力者は、労働力も土地も機械も環境も、世界の問題はすべて商品化することで解決しようとするけれど、著者はすべてを民主化するしか解決策はないと言います。

今の世の中で仕事ができる成功者というと、何でも商品化して儲けることができる人のことを言いますよね。そうしたビジネス本がいっぱいあって、よく売れてるみたいです。

お金があったらたいていの問題は解決するんじゃないかとわたしも思います。

それに比べて「民主化」はまどろっこしいし、腐敗しやすい。

今のところ「商品化」が優勢な感じでしょうか。

でも「お金があれば幸せになれる?」と問われたら、それはそれでちょっと躊躇します。

この本のおしまいに、欲望を満足させることと本物の幸せの違いについて述べているところがあるんですが、そこがいいんです。

資本主義と民主主義が対立する今の暮らしには結局救いがないように見えます。

でも、複雑で矛盾してて、ダメな部分もいっぱいある人間だけど、そんな中にもお金に換えられない価値観、他者を思いやる喜びなんかがときどき顔を出す瞬間があるんですね。

そこに希望がある。

変化し続ける人の暮らしに見合ったふさわしい仕組みはまだまだ発展途上です。

今権力者に都合のいいように見える仕組みもまた、環境を破壊し続けずには勝ち続けられない矛盾を抱えていて、いずれは誰ひとり得しないずさんな仕組みであることは明白です。

そんな仕組みに洗脳されて、いらないものまで買わされていることにも気づかないで暮らすなんて嫌だな。

いつかいいアイデアが実現するそのときまで、今の経済に翻弄されるのは避けられないけど、自分なりの判断で暮らしをまわしていきたい。

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